皆さん、こんにちは。 GEISAIチアマン、アーティストの村上隆です。
このイベントも数を重ねること 4回目、「GEISAI-4」を迎えることが出来ました。
1年振りに東京ビッグサイトに戻っての開催です。
GEISAIのスピリットは学園祭にあった!
今回のタイトルは「終わらない学園祭」。もともとGEISAIの基点となったコンセプト「学園祭の興奮をイベントとして構築する。」的意味合いはもちろん、35歳以上の方、すなわち私と同世代の方々は劇場用アニメ「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」を思い起こすことでしょう。 学園祭を翌日に控えて泊まり込みで大騒ぎする主人公たち。しかし何日経っても、学園祭当日は訪れる事なく「学園祭前日」が繰り返され、誰もその事に気付かない……、というストーリー。 学園祭という、誰しも経験ある「日常の中の非日常性」を追求し、一級のSFファンタジーに昇華したこの映画は、当時のアニメシーンのみならず、サブカルチュアシーンに大きな衝撃を与え、私も強く共感を覚えました。何故なら、私自身、20年前は東京藝術大学の学生で、学園祭にのめり込んだ日々を過ごしていたからです。 当時の「学園祭」の興奮は、世界中で展覧会を行っている今の私の状況と比較しても、遜色ない、最高の記憶として残っています。
そこには出会い、喧騒、商い、大真面目な主義主張がありました。そして、それこそがGEISAIの原点なのです。 GEISAIも、20年前、私自身が今この瞬間に「生きている」と感じた「学園祭」の熱量を思い出すもの、すなわち本物の「自由」を実感するものであって欲しい、と強くそう願います。
今回、この「終わらない学園祭」というタイトルにふさわしく、「GEISAI-4」直前の9月12日(金)、そして「GEISAI-4」当日の9月14日(日)まで、私の母校でもある「東京藝術大学学園祭」も行われています。これは偶然、両者の日程が被っていました。「GEISAI-4」ブース出展者の方々は残念ながら両日、本家「藝祭」への見学は果たせないでしょうが、観客の皆様は是非「GEISAI-4」観覧終了後、本家「藝祭」へ立ち寄ってみて下さい。「本家本元」の興奮も体験できることでしょう。
「GEISAI-4」、そして「GEISAIミュージアム」誕生
我々の「GEISAI-4」に話を移します。 まず今回の本戦審査員に驚かれた方も多いと思います。 今回は肩書きに「アーティスト」と付く人がいません。 審査員は、花人の川瀬敏郎氏、美術評論家の椹木野衣氏、マンガ・イラストレーターの寺田克也氏、 A BATHING APE(R) プロデューサーのNIGO氏、SUPERCAR のフルカワミキ氏の5人。
このような、ある一方の方向に針が「振り切った」審査員のキャスティングを行った結果、見えて来たリアリティは2方向あります。 1つは日本にいるクリエイターの肩書きに「アーティスト」はいらないかも、と言う事。すなわち今回の審査員の皆さんのように生け花や漫画、ファッションプロデューサーやミュージシャンの方がよっぽど「アーティスト」として自由なクリエイティヴライフを送っているのではないか。
ただ、その一方で、そうは言っても、あくまでクライアントのいない形で、自由に絵を描いたり、彫刻したり、映像をつくったりしたい人もいれば、クライアントのあるなし、イラストとアートの境もどうでも良く、ふにゃけた形でもいいから、とにかく「アーティスト」になりたい人間も大勢いる。 私は個人的には、かちかちに熱した鉄板の上で自分自身を踊らせるタイプなので「アーティスト」という冠を被った、安穏とした生き方には賛同出来ませんが、ともかくもアートの既成の枠組みを壊し、その一方で土壌を耕すことで、日本のクリエイティブを再構築したい。GEISAIはそのための最速の実験場でもあるのです。
すでにご存知の方もいると思いますが、今年、GEISAIからはもう一つの新しいGEISAI、「GEISAIミュージアム」が誕生します。
現在の日本の美術館は、国営、公営が、半官半民のような中途半端な状態となり、美術作品のコレクションも行われず、なにが美術館の役目なのかが問い直されている、重大な岐路に立たされています。結果として東京都現代美術館での「ジブリがいっぱい スタジオジブリ立体造型物展」や京都国立博物館の「アート オブ スター・ウォーズ展」のように、ビッグネームのメジャーエンタテイメントムービーのコンテンツを借り受けて、見せ物小屋として再スタートを切り、世間の冷笑を買ったりしています。(私個人的には大賛成ですよ!!だからスーパーフラットって言ってたんだし…。)これまでの「美術」における価値観が総崩れした現在、一体日本にとっての「美術」とは何なのか?その意味が問われています。
第1回「GEISAIミュージアム」では、そんな閉塞した日本美術館界に風穴をあけてくれる可能性を持つ美術館から、審査員の皆様をお招きしました。
私がそのキュレーション力をリスペクトする水戸芸術館 現代美術センター芸術監督・逢坂恵理子氏、イベントや展示を通して新しい美術館興行スタイルを模索している岡本太郎記念館 館長・岡本敏子氏、美術館の枠を広げる横浜ブリキのおもちゃ博物館の館長・北原照久氏、そして、オープンを控える新しいミュージアムである金沢21世紀美術館(仮称)館長・蓑 豊氏(平成16年4月就任予定)と森美術館 副館長・南條史生氏。
この、怱々たる面々で日本の美術業界ど真ん中に照準を絞り、これまでのGEISAIとは一味違う、ハードエッジなGEISAIを行いたいと思っとります。GEISAIと「GEISAIミュージアム」は、一枚のコインの裏と表。2つで一つの世界を補完しあう関係なのです。 ただし…参加希望者の中にそれだけの期待に応えられるハードエッジな美術人がいるのかどうかわからないので、ブース数はミニマムな規模でのスタートです。開催は今年12月14日(日)六本木ヒルズ 森タワー24F特設会場にて。すでに参加募集もスタートしています。⇒詳しくは応募要項をご覧ください。
かくして、「GEISAI」プロジェクトは、このように重層的なアングルが連なり、蠢く現場が予想されます。一体ここから何が生まれるのか?ただし、そんな未来の企画も何も、今回のエキジビットの熱量無くして語れません。2003年夏、「GEISAI-4」。 ぜひともブース参加者、そして一般観客の皆様における盛り上がりを期待しています。
そして最後に
去年のGEISAI-2をみて、「BT/美術手帖」誌上で3人の識者がGEISAIをさかなに鼎談していました。 その中で、美術評論家の清水穣氏がこう言い放ちました。『GEISAIからは村上隆の言う、欧米に対する新しいルールというのがまるで見えてこない』 なる程。のどもとまで出かかる、冷たい一言をのみ込んで、私はただ実行し続けます。 GEISAIこそ、世界の美術を変えてゆく21世紀はじめての美術革命なのですから。
(GEISAI#4 パンフレットより)